残業代請求をするにあたって、まず最初にするべきことは、証拠集めと未払い残業代の計算です。
専門家に依頼する場合でも証拠集めは労働者本人がしなければなりません。
(私達にご相談いただいた場合、収集方法や会社への開示要求などをサポートさせていただきます。)
会社側に知られる前に集められるだけの証拠を集められるかがカギになります。その証拠が揃ったらそれに基づいて残業代を計算します。
未払い残業代の額がわかったら、いよいよ会社への請求です。
残業代請求は、
とに分かれます。
会社に対して内容証明郵便を出します。弁護士や司法書士などの専門家に依頼した場合、まず残業代金の請求を求める手紙を「配達証明つき内容証明郵便」で出して、会社側の出方を見ます。
内容証明郵便:
「いつ誰がこういう内容の手紙を出した」ということを郵便局が証明してくれるもの
配達証明郵便:
「相手方が手紙を受け取った日付」を証明してくれるもの
この2つを組み合わせた配達証明つき内容証明郵便は「差出人・発送の日・内容・相手方が受け取った日」が証拠として残せるので、後々裁判になった時にも「残業代請求を行った証拠」として使えます。
残業代の消滅時効は2年です。
これは残業代を請求する権利が2年で消えてしまうということです。
残業代請求の時効を止める方法は、口頭や手紙など、どんな方法でも構いません。
しかし、口頭や普通の郵便では証拠が残らず、言った言わないの争いになる懸念があります。
そこで証拠の残る配達証明つき内容証明郵便によって残業代請求を行い、消滅時効を確実に止めます。
これにより会社がすぐに請求に応じなくても、裁判の準備に時間がかかっても、内容証明郵便を出した時から2年前まで遡り残業代を請求することができます。
内容証明郵便には威圧感があります。いくつも判子が押され文言も重々しい文体で書かれることが多く「支払いがない場合には法的措置に講ずる」などと書き添えるため、受け取った会社側も無視しがたくなります。
特に弁護士・司法書士を代理人に立てている場合には、有資格者の名前で職印が押された内容証明を送るため、すぐにでも訴訟を提起されるかもしれないという心理的圧迫を与える効果が期待出来ます。
内容証明郵便を受取った会社の反応を見て、残業代支払いに応じてくれそうな場合は任意で交渉を進めます。
労働者側も裁判になった場合の手間と費用を考えて、減額した金額で和解することもあります。
労働審判は、解雇や給与・残業代の不払いなど会社と労働者との間のトラブルを迅速に解決することを目的として平成18年から始まった比較的新しい手続きです。
労働審判官(裁判官)と労働審判員2名からなる労働審判委員会・申立人(労働者)・相手方(会社代表者)・弁護士、司法書士等代理人に依頼した場合にはその代理人、以上のメンバーが出席して行ないます。
期日に集まり、労働者側・会社側それぞれの言い分を聞いて意見が食い違う点を整理し、必要に応じて証拠調べをします。
原則3回以内の期日で結論を出すことになっています。
話し合いによる解決が出来れば調停(和解)が成立し、話し合いがまとまらなければ労働審判を下します。
労働審判とは労働委員会が出した解決策で、裁判でいうところの判決にあたるものです。
審判に異議がなければ審判は決定し、判決と同じ法的効果がありますし、審判に異議があれば通常訴訟に移行します。
専門知識のある労働審判員が間に入ってくれるので、
専門家に依頼せず自分で行なう場合でも利用しやすい手続きです。
労働審判の結果に納得がいかず、
労働者と会社のどちらかまたは双方が異議を申し立てた場合には通常訴訟が始まります。
また、労働審判の3回の期日では結論がでないくらい複雑な案件の場合には、最初から通常訴訟を提起することもあります。
通常訴訟の場合、期日の回数制限はありません。
一ヶ月ごとに期日が設定され結論が出るまで続きます。
判決または和解が成立するまで1年以上掛かることも珍しくありません。
残業代請求はタイムカード等の証拠があっても、会社側から「残業せずに帰るように指示を出していたのに労働者の勝手な判断で職場に残っていた。不必要な残業だ。」という主張が出て残業時間について争いになることが多々あります。残業代全額を認めてもらうのは難しく、また時間もかかるため、落ち着きどころを探して和解することが多く、また裁判官も何度も和解を勧めてきます。
少額訴訟は残業代が60万円以下の場合に限って利用できる特別な訴訟手続きです。
簡易裁判所で行ない、原則1回の期日で審理を終えて判決が出るので、労働審判よりも早く決着がつきます。
もちろん話し合いによる解決が出来れば和解することもできます。
少額訴訟の判決に不服がある場合には異議申立てをして、同じ簡易裁判所(同じ裁判官)で通常の裁判を行なうことになります。
しかし、異議後の訴訟には反訴を提起することはできず、判決にも控訴できないなどの制限があります。
少額訴訟はスピーディーな手続きですが、1人の裁判官の判断にゆだねられるため、労働者に有利な結論な下されるかどうかの不安もあります。
確実に証拠が揃っている場合のみ利用するのが得策と言えます。
労働基準監督署とは労働条件と労働者の保護に関する監督を行なう公的機関です。
略して労基署とも言われます。労働基準監督署を利用した場合の手続きの流れは以下の通りです。
会社所在地を管轄する労働基準監督署に申告する
労働基準監督署が会社に立ち入り調査を行なう
労働基準監督署が会社に残業代を支払うよう勧告する
公的機関が動いてくれれば労働審判や訴訟を起こす必要がないように思われますが、現実はそううまくは行きません。
労働基準監督署の勧告には強制力がなく、会社側に支払う意思がなければ残業代は返ってきません。
また、申告をしても労働基準監督署がどこまで動いてくれるか保証はありませんし、公的機関ですので原則民事不介入なのです。労働基準法に違反している会社を正すという目的のもとで動きますので、労働者個人の利益のために動いてくれる訳ではないからです。
残業代未払いが明らかな場合にはすべての労働者の残業代を支払うよう勧告されますので、問題が大きくなり会社が窮地に立たされる場合もあります。
労働基準監督署への申告だけで未払い残業代金を支払ってもらうのは難しいですが、
残業代請求をする上でうまく利用することは出来ます。
例えば、内容証明を出す場合に「残業代の支払いがない場合には労働基準監督署へ申告します。」と書いておきます。
自社の労働契約が労働基準法に違反していることを知っている会社であれば、労働基準監督署の調査が入れば面倒だと思い、残業代支払いに応じる可能性があります。
労働基準監督署の調査や勧告は労働者個人にもたらすメリットは少ないかもしれませんが、会社側に与えるダメージは大きいのです。「労働基準監督署に目をつけられた」となると会社は経営がしにくくなります。
そこをうまく利用して労働基準監督署への申告をチラつかせながら、任意交渉を進めるという方法もあります。
このように個々のケースで最適な戦術があります。
まずはご自身の状況を専門家に伝え、効果的な戦い方を検討してもらうことが確実な勝利への近道といえます。
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