裁判所を利用して未払いの残業代が認められても、
実際に会社が支払いに応じない場合はどうしたらよいのでしょうか。
労働審判や訴訟など裁判所を通して未払い残業代を認めてもらった後でも、会社が任意で残業代を支払うのを待つことになります。
「残業代○○円を支払え」という判決が確定しても裁判所が会社からお金を回収してきてくれる訳ではなく、その判決に従って会社が支払ってくれるのを待つだけなのです。
会社が支払いに応じない場合には「強制執行」という手続きがあります。
強制執行とは、相手方が持っている財産を差し押さえて債権を回収する手続きです。
まず、強制執行をするためには「確定判決」「確定した労働審判」「調停調書」「和解調書」などが必要で、裁判に頼らない任意交渉で残業代を認めているだけの場合には強制執行はできません。任意交渉の場合にはまず訴えを提起し判決等を取得する必要があります。
強制執行は裁判所へ「差押命令の申立て」をしておこないます。
申立てにあたっては、会社のどの財産を差し押さえるのか事前に見当をつけておかなければいけません。
差し押さえるものとしては「預金口座」「売掛金」などで、預金口座はどの銀行の何支店かがわかれば差し押さえられます。
口座番号までは必要ありません。
どうしても預金口座が分からない場合には、会社の近隣にある銀行の支店を対象に差押さえをしてみる場合もあります。
その支店に口座がなければ、また他の銀行を対象に差押さえをやり直し、口座が見つかるまでこれを繰り返します。
売掛金の差押さえとは、例えば取引先Aが会社に対して支払う金銭を、会社ではなく自分に支払ってもらえるようにする手続きです。
定期的に売掛金が発生しているような主要な取引先が分かっている場合には売掛金を差し押さえます。
これは「取引先に迷惑がかかる」と会社側が嫌がる方法でもあります。
強制執行の申立ては、労働審判や訴訟とはまた別の手続きですので、申立書や添付書類の作成も必要ですし、手数料も別途かかります。
代理人に依頼する場合にはまた追加で報酬を払わなくてはいけません。
残業代を確実に回収するためとは言え、手間とお金のかかる手続きです。
残業代請求の労働審判や訴訟において、裁判所は何度も和解を勧めてきます。
裁判所が突きつける判決よりも双方が納得した和解の方が、その後の残業代の支払いがスムーズに行われる可能性があるためです。
和解の場合には「一括で払うから減額して欲しい」とか「お金がないから分割で支払いたい」などの会社側の財政状況も考慮して支払額や方法を定めることが出来ます。
残業代全額の支払いにこだわるよりも、多少減額しても和解により早期解決し確実に残業代を支払ってもらった方が長い目で見て有益な場合もあります。戦いには「引き際」の見極めが非常に大切なのです。
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