残業代請求の判決としてまず思い浮かぶのは、2008年1月のマクドナルド店長への残業代支払いを命じた判決です。
入社2年目で店長になったTさんは人件費削減の中、長時間労働を強いられていました。
残業は月に100時間を超え休日出勤も続く過酷な労働状況でしたが、管理職であることを理由に残業代は支払われていませんでした。
労働基準法41条に「監督若しくは管理の地位にあるもの(管理監督者)」には「労働時間・休憩及び休日に関する規定は適用しない」という定めがあります。これを「管理職には残業代を支払う義務はない」と解釈し、多くの企業は残業代を支払っていなかったのです。
マクドナルド店長の裁判の最大の争点は「店長が労働基準法上の管理監督者にあたるか」という点でした。
人事や経営についてある程度の決定権を持っていること
労働時間や仕事について自由裁量があること
賃金等について地位にふさわしい待遇を受けていること
などが過去の裁判において管理監督者の要件とされていました。
マクドナルド店長の場合は、店舗内の人事や経営に対しては一定に権限はあるが会社全体に対しての権限は無く、また労働時間を左右する店舗の開店閉店の時間を決める権限もありませんでした。
裁判所は、マクドナルド店長を経営者と一体的な立場にある管理監督者とは認められないとして、500万円を超える残業代の支払いを命じました。裁判所が「マクドナルドの店長は労働基準法上の管理職ではない」として残業代の支払いを命じたこの判決はマスコミでも大きく取り上げられ「名ばかり管理職」が広く知られるきっかけとなりました。
これを受けて管理職の残業代を見直す企業もありました。
2011年にはコンビニエンスストアSHOP99の店長への残業代支払いを命じた判決もありました。
正社員として入社したSさんはわずか9ヶ月後に店長に就任しました。
24時間営業の店舗には正社員は1名だけで後はパートとアルバイトという環境でした。
パートやアルバイトがシフトに入れない時間帯は正社員がシフトに入りその穴を埋めていたため、Sさんは法定労働時間を超えて長時間労働を強いられていました。
会社側は「Sさんは店長であるため残業代は支払う必要なない」と考えおり、この裁判でも「店長が労働基準法上の管理監督者にあたるか」ということが最大の争点になりました。
SHOP99側はマクドナルド店長の判決を知った上での争いでした。
チェーン店の店長の処遇についてもう一度裁判所の判断を問う形になったのです。
最終的にSさんは「権限が少なく労働基準上法の管理監督者であったとは言えない」として残業代請求が認められました。
管理監督者の基準について上記のマクドナルド店長と同じ判断が下されたため「名ばかり管理職の無報酬の残業を許さない」という裁判所の姿勢が確固たるものになりました。
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